前回は MDR-1RBTの「概要」や「使用感」「MDR-1Rシリーズの違い」などを紹介しました。今回は MDR-1RBT 機能面の続きと音質の記事になります。
(3)機能面
■音漏れ/遮音性能
「機能」ではありませんが、音漏れ/遮音性能に触れておきたいと思います。MDR-1RBTは十分な音量※1 で聴いていると微かに音漏れがあります。歌詞や曲フレーズがそのまま漏れている訳ではなく、空気を振るわす音がします。耳を近づけないと分からないレベルですが、電車内で隣席する人には気になるかも知れません。
遮音性はそこそこあります。構造的にも耳をスッポリ覆うタイプのため外部の音は届きにくいです。ま、“そこそこ”なので駅構内のアナウンスや携帯の着信音は聞えて来ますね。もっと高い遮音性能を求めるのであれば、ノイズキャンセラ搭載の「MDR-1RNC」を考慮に入れてもいいかもしれません。
■USB充電対応
充電はUSBケーブル(microUSB)を使って行います。左耳側にUSB端子があります。充電時間は 約6時間ほどで再生/通話は約30時間可能です。バッテリーは内蔵タイプなのでヘタって来たら修理対応になると思います。
(4)音質
購入した機器は MDR-1RBTですが、ケーブル接続時の音質は MDR-1Rと同じだと思います。ここでは主にケーブル接続でリスニングした感想になります。Bluetooth接続時の音質は最後に書きます。
■前提条件
<レビュー対象> MDR-1RBT + iBasso Audio HDP-R10
<比較対象> MDR-EX1000 + iBasso Audio HDP-R10
[HDP-R10共通設定] Gein: Mid / EQ: OFF / DF: low Roll-off / SRC: OFF / Firmware: v8.0.2 / Etc: MDR-1RBTとHDP-R10はケーブル接続 |
MDR-1RBTを手に入れてから現在までに 50時間以上は再生していると思います。再生から最初の数時間は音域バランスの悪さを感じましたが、熟れてくるとバランスも大分良くなってきました。
まず、MDR-1RBTを聴いて思ったのが“愉しめる音”だということです。どうしてもモニター指向の強いヘッドフォンは、“不快な音”であっても原盤に録音されていれば再現する向きがあります。その点、MDR-1RBTは音にモニター製品のような尖った感じやギスギスした感じを受けることはありません。
人間の性格に例えるなら、MDR-EX1000のような「生真面目タイプ」は何事にも実直な反面、特有の窮屈さを感じたり、面白みに欠ける所があります。MDR-1Rシリーズは「明るく弾けた感じ」のキャラクターなので、親しみを持ちやすいと思います。(与えられた役割や能力は別にして)
オーバーヘッド型はドライバーユニットが大きく取れることもメリットですね。大きなドライバーユニットから繰り出される音には豊かさや余裕があり、音圧もシッカリ感じることが出来ます。カナル型ではドライバーユニットのサイズに制限を受けやすく、低音域の音の深さには限界がありますね。
以下は音域別の感想になります。
■高音域
高音~中音域は「液晶ポリマーフィルム」の真骨頂というべき領域ですね。
サックスに代表されるような金属的な音の再現性は、ダイナミック型の振動板よりバランスド・アーマチュア(BA)型の方が優れている様に感じますが、MDR-1Rに採用されている「液晶ポリマーフィルム」は BA型にも引けを取らない音を聴く事ができます。
音の伸びや透明感では MDR-EX1000に一歩及ばないものの、価格帯から考えれば十分な再生能力だと思います。購入直後は高音域と低音域のバランスが悪くギクシャクしたイメージを持ちましたが、エージングして行くとバランスは改善されました。
欲を言えばもう少し高音域に伸びがあれば良かったかなと思いました。私の知っている液晶ポリマーフィルムの性能であれば、高音域がもっと鳴っていても不思議はないのですが、、、ま、キリキリと高音域の限界まで音を出すとモニター製品との棲み分けも難しくなるのでしょう。
■中音域
安定した音で表情豊かに聞こえますね。音圧の強さからか音にドライブが掛かったような感じも受けます。(日頃はカナル型の低い音圧で聴いているので、、、)
ポップスのボーカル域で比較すると、MDR-EX1000は「肉声」に近い音でしたが、MDR-1RBTは「ホールで聴いている」感じに近いでしょうか?
ただし、距離感に優劣を付けるのは難しいです。例えば、MDR-EX1000は“リアル”で多彩な音が耳に飛び込んで来る代わりに、曲の主題を忘れて特徴的な音ばかり追いかけてしまうことがあります、、、w
MDR-1RBTはもっと曲全体の見通しが良いように感じます。「このパートはこの楽器が主役」かしっかり教えてくれます。他の音に浮気する気にもなりませんw 別の言い方をすると、モニターの MDR-EX1000は近視眼的で、MDR-1RBTは曲を俯瞰して見る(聴く)ことが出来ます。
■低音域
MDR-1RBTの低音域は MDR-EX1000を聴いた後だと少し低音が主張しすぎている感じもします。ただ、一般的?にはこれぐらい低音が出ている方が多くの人が愉しめると思います。反対に MDR-EX1000ではドライバーユニットの大きさ的にもここまで厚みのある低音は出せないと思います。
ポップスではバスドラムがしっかりリズムを刻んでくれるので、曲も全体的に安定して聞こえますね。他には映画音楽やポピュラー音楽を聞いてみると、バスサックスやバリトンサックスが奏でる深い低音も心地よいです。もともと液晶ポリマーフィルムは金属質な音は得意ですが、サックスが持つ独特の共鳴音がクセになりそうですw
<Bluetooth接続時の音の表現力>
前回も触れましたが、MDR-1RBTの特徴として Bluetooth接続時は高音質化技術「DSEE」や「S-Master」が使えます。(というかBluetooth使用時はオフに出来ないw)
DSEEや S-Masterのお陰で Bluetooth接続時に感じる「音質の劣化」は随分とマシになります。具体的には、他の Bluetooth製品と比較して S/N比は良く感じます。音量を上げても音がスカスカな状態はなく、音に厚みを残しつつエッジの効いた音が愉しめます。
あと、音質とは関係ありませんが、Bluetooth接続時は MDR-1RBTのハウジング部の操作ボタンで「音量調整(ボリューム)」と「再生/停止/曲送り等」が使えるので便利です。マイクも装備しているので、スマートフォンと接続してハンズフリー通話も出来ます。
(5)気になったこと
細かい点も含めて MDR-1RBTを使っていて気になった点を紹介します。
- 端子カバー
イヤフォン端子とUSB端子は端子カバーに保護されています。端子カバーは何度も開け閉めしていると緩くなって来そうです。残念ながら端子カバー自体を取り外すことも出来ません。もっとスマートな端子カバーは出来なかったのでしょうか? どうせなら端子カバーのない方が便利ですね。
- ケーブル周りのデザイン
上記の端子カバーと関連しますが、ケーブル接続時の外観的な見栄えが良くありません。MDR-1Rと似たようなデザインに出来なかったことが惜しまれます。ソニーとしては「MDR-1RBTを買う人は Bluetoothがメインでしょ?」と言いたいのかも知れませんが、、、
- apt-X非対応
メーカーの仕様にもあるように、MDR-1RBTの Bluetoothは高音質コーデック「apt-X」に非対応※2 です。未だウォークマンが apt-Xに対応していない事にも理由がありそうです。“鶏or卵のどちらが先”でも構わないので早く apt-Xに対応して貰いたいですね。(追記) 後継機『MDR-1RBTMK2』では apt-Xに正式対応しました。
- 接続コードは1本のみ
意外にも、接続コードは 1.5mのものが 1本付属するのみです。今までの製品だったら 0.6mぐらいのケーブルがもう 1本付属していたのですが、、、 これもコスト削減の一環でしょうか?そそ、端子は「3.5mmステレオミニプラグ」で標準ステレオプラグではないので注意です。ソニーは独自規格になることが多いですが、MDR-1RBTは一般的なステレオミニプラグなので他社製の高音質ケーブルと交換して愉しむことも出来ますね。
(6)まとめ
MDR-1RBTは「ワイヤレス(Bluetooth)をメインに使いたい」or「時々ワイヤレスでも使う」という人に向いています。Bluetoothの音質劣化が気になる方はベースモデルの「MDR-1R」をオススメします。(軽いし)
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オーディオが好きになってくるとモニター製品が気になったりします。ま、モニター製品を買って「今まで聞えなかった音が鳴っている!」と悦に入るのも楽しみの一つではあるのですがw 本当に自分にあった、自分の好きな音を奏でるヘッドフォンを探すのも愉しいと思います。
MDR-1RBTはモニター製品に目を向けがちだった自分への反省も含めて、今回は良い勉強になりました。いい音の基準は人それぞれですが、自分にあった「愉しい音」はきっと「いい音」に違いありませんよね。
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